【活動報告】コミュニティカフェプロジェクト 第1回ワークショップ

文:海子揮一/写真:渡邉武海

 

 2011年11月27日、女川町立病院(現・女川町地域医療センター)の仮設コミュニティースペース「おちゃっこクラブ」にて、京都在住の美術家・小山田徹によるワークショップが行われました。

 今回設営するコミュニティカフェの建物は、町立病院の敷地内に町の予算でプレファブで建設し、11月始めには「コミュニティスペース」として完成されていました。そのスペースをギャラリー付きカフェに改装していくことが主な活動となりますが、成り立ち上「用意されたコミュニティスペース」をどのように住民が自分達の居場所として獲得していくか、設営後の運営も見据えて対話しながら実際に空間を作っていくのが活動の目的です。

 

  小山田徹は1990年代から、各地で多様な視点によるフィールドワークを行い、人々と協働で共有空間を作る活動を続けてきました。特に人々が主体的に場に関わる事でその場の可能性が開かれ、感応するようにより創造的な行為が誘発されることに着目してきました。

  今回の震災に対しては、原子力発電所の事故や法律や制度上生じる救済の穴などが象徴されるように、社会システムの大きな力が災害弱者を襲うことを「文明の津波」と呼び懸念し、人間が本来持つ創造性や連帯力の可能性を模索していました。特に長中期的に人々を孤立無援にする状況である事を予見して、手芸やDIYなど手仕事をしながら近隣のコミュニティの関係を深める「手遊び屋台」(9月17日女川第一小学校)を京都市立芸術大学の学生と開催しており、小山田個人としては4度目の訪問、対話工房としては最初のワークショップとなります。

  ワークショップではまず始めに、小山田の共有空間の代表的な例である「バザールカフェ」の仕事が紹介されました。単なるノウハウの説明だけではなく、多種多様な人々が集まる事で生まれる可能性や、単なる作業と捉えず、仕事を細やかに分け、できるだけ多くの人がカフェ作りに関わる「ひだ」を増やし、都市の空地の様なスペースが積極的にかつ主体的に活動する人々が広く交流する場に変化していく様子を細やかなエピソードにわたって丁寧に説きました。

過去の屋台作品の一例
過去の屋台作品の一例

 多くの参加者が関心を示したのは、一連の「屋台」の仕事のスライドでした。ローコストで、シンプルな作り、軽量で人力で移動でき、設営してオープンすれば劇的にその場を異空間へと変えるインパクトの強さ。現実問題として被災地には建築の厳しい制限がかかっており、地元に残って再興に奮起する人々の活動を強く制約しています。また強烈な津波の体験は重厚長大な建造物への懐疑を生むには十分であり、「移動できること」と「カスタマイズできること」という要素は今の日常から少し先の明日への確かな手がかりとなるツールかもしれません。

 後半は自己紹介を兼ねた、アイディアストーミング。このカフェ空間と周辺を使って何ができるか、何が必要か、何がしたいかのアイディアを出し合いました。地元参加者とメンバーの個性がアイディアに反映されて話が拡がりました。普段でも大勢の前で個人のアイディアや意見を表明するのはためらいがちになるものですが、海やヨットの話や、食にまつわる話、イベントのアイディア、そしてこの土地の話になると場が活気づくのはこの街と暮らしを愛し、仲間と共に明日を向いて歩もうとしている証なのかも知れません。

What's New

▶︎特別な道具や材料が不要の非常用焚き火台「枝トーチ」の作りかた。

twitter "taiwakobo"

2012年9月号「迎え火特集」