女川町・出島キャンプレポート


去る6月6日、7日、対話工房の活動のひとつして、女川町の出島(いずしま)でキャンプを行い、地元の方々もご一緒に現地でのひとときを過ごしてきました。


出島は本州側にある女川町中心部から見て北東にあり、女川港から離島航路就航船で行ける島です。朝の第1便で船に乗り、出島港で下船。港近い場所にベースキャンプを設けました。


女川ネイチャーガイド協会さんの協力のもと、ティピーを設営
女川ネイチャーガイド協会さんの協力のもと、ティピーを設営

憩いの場づくり——ひょうたん棚の設置

いつも島の窓口となっていただいている方と、京都市立芸術大学学生グループのtrams(トラム)メンバーとの数年来の交流の中で、今回はご自宅があったこの敷地にひょうたん棚を設置させていただくことになりました。高台移転により今は無人の地区ですが、小さくとも憩える場をつくろうという取り組みです。


身近な素材を使って必要なものを作るブリコラージュという手法から、土地がもつ環境や知恵が見えてくる。作業を指揮する小山田徹(写真左)
身近な素材を使って必要なものを作るブリコラージュという手法から、土地がもつ環境や知恵が見えてくる。作業を指揮する小山田徹(写真左)


対話工房メンバー、小山田徹の指揮のもと、島の方から提供していただいた竹を素材に、小屋の周りからも材料も調達して、無事に棚を作り上げました。足元の花壇には持ってきた苗と種を植え、そのできばえは島の方々にも喜んで頂きました。ひょうたんの成長がとても楽しみです。


午後からは夕食の食材調達です。山から薪を集め火を焚き、汲んだ海水を煮詰めて塩づくり。敷地周辺の野草(セイタカアワダチソウ、ヨモギ、クズなど)の新芽を採取。これで天ぷらの材料と調味料が揃いました。


完成した出島の塩
完成した出島の塩

海辺の記憶マッピング

ひょうたん棚づくりを終えた夜、出島地区と寺間地区の方をお招きして、もう一つの活動である「海辺の記憶マッピング」の寄り合いを開きました。


これは公式な地図にはない、自然と共に生きる人びとの記憶のなかにある磯、浜、岩礁、岬など海辺の地形に宿る「呼称」を掘り起こし、マッピングしていくものです。2013年から続く「女川国物語」プロジェクトの一環として、民俗学的アプローチを絡ませながら海と共に生きる女川びとの物語の採集や、精神的な風景を描き共有し、地域の人びとが自らの地域に目を向ける手がかりをつくるために活動しています。


古くから漁師は、地形や岩や木を目印にした「山立て」という航海法で位置を測って漁を行なってきました。微細な地形につけられた名前には、先祖から引き継がれてきた生きていく為の術や、歴史、逸話、信仰や願いなどの物語が宿っています。


実際お聞きすると、同じ磯でも地区によって発音やあてる漢字が異なっていたり、先祖がそこで遭難した為にその家独自の名前がつけられている様です。また時には「いまここで名前つけたらいいんでねぇの」となったり、海を大らかに分かち合う水辺の文化と、安全な航海や漁の出来不出来に直結する道しるべとしてその呼称が今も生きていることを知りました。


最後に「やっぱり船にのってみねぇと。地図ではわかんねぇな。今度は船で島を一周しよう。」と誘っていただきました。

「金華山からやってきた神様がこの岩にいったん足をつけて、浜の厳島神社にやってくる、と昔から言われてきたんだ」
「金華山からやってきた神様がこの岩にいったん足をつけて、浜の厳島神社にやってくる、と昔から言われてきたんだ」

 

出島住宅の集会所に貼らせていただいた大きな地図に、今後は島の人びとが書き込んだり、地形の探索を続けるネイチャーガイド協会さんの情報を加えたりして少しずつ更新していく予定です。



重機の音が止まった刹那の鳥の声、新鮮な海の幸、緑豊かな山、満天の星、そして皆さんの温かなもてなし。島の方々の誇りとしている「宝の島」の魅力を存分に味わいました。


What's New

▶︎特別な道具や材料が不要の非常用焚き火台「枝トーチ」の作りかた。

twitter "taiwakobo"

2012年9月号「迎え火特集」