震災後の暮らしの中で新たに海や山の価値に気づいたという声を多く聞きます。恵みをもたらし災害を招く自然との新しい関わりを、様々な表現により形作り共有していく活動が「うみやまさんぽ」です。身近な海と山が持つ歴史や特性を知り、地域づくりや将来の災害に備えていく取り組みとして女川町内外の人々が連携して取り組んでいます。
その一環として、女川町の三角峰・石投山(467m)の山頂に登り、12月22日(冬至)の日の出を眺めよう。そんな小さな冒険が計画されています。企画の発端は、出島の謎のストーンサークルと呼ばれる配石遺構についての、ある地域研究家の仮説。2012年秋に女川を訪れた山田創平さん(京都精華大学)は「遺構は海洋民族の末裔、古代女川人の暦だった可能性もあるのではないか。太陽が地形と遺跡に関係する事例は各地にあります」と言います。この仮説によれば、夏至の太陽は出島遺跡から見て石投山山頂に沈み、逆に冬至の日の出は同山頂から見て出島遺跡の方角から上るとのこと。この歴史と地形に基づく仮説に、震災後から女川の山の価値を守る活動を始めた女川ネイチャーガイド協会理事の藤中郁生さんが共鳴。瞬く間に10名の参加者が集まりました。
藤中さんは「とても夢ふくらむ話。女川に生まれ育っても石投山山頂からこの街を見た人は少ないと思う。ぜひこの目で日の出を確かめたい」
とにこやかに語りました。
清水地区の奥から山頂までは、健康な成人男性の足で約2時間。頂から広がる景色は海と山が美しく重なり、地球を感じる程のパノラマの絶景だといいます。現在は伸びた枝越しの眺めですが、今後ルートと山頂部の整備が進めば、金華山から気仙沼まで一望できる場所になります。宮ヶ崎の浜から山頂付近までつながる広い林道もあり、海と山を連携させた観光資源の可能性も秘めています。協会では「整備は始まったばかりだが、女川の子ども達が登り、故郷の雄大な自然を見て心に刻めるような山にしたい」と期待を寄せます。この記事を執筆中の現在(2013年12月18日)は登頂直前ですが、次号この紙面で、気になる 当日の日の出の報告もできたらと思います。
(写真)企画に向けて、女川ネイチャーガイド協会の手で山頂に至るルート整備が急ピッチで進められている。一歩一歩林道に茂った雑草や潅木を切り払うという地道な作業。鹿の群れやハンターと遭遇することも多いという。
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